きみに想いを、右手に絵筆を

「和奏先輩……?」

 白河も同様に腰を下ろし、俺を心配していた。

「もう良いよ、別に」

「えっ……?」

「あ。でもモデルありがとな?」

「……あ、諦めちゃうの?」

 無理に笑顔を作る俺を見て、白河は瞬時に察した。

 俺がこれ以上の悪あがきをしないという事に。

「〆切、週明けだし。描き直すって言っても、絵具も無いし。油絵具、高いから買い揃えらんないし」

 ズタズタになったキャンバスを立てて、画布を剥がさないとな、と側面に触る。

「じ、じゃあ私がっ。誰かに頼んで借りて来ます!」

「え、良いよ、別に」

「美術の先生とかっ、事情話せば何とかなるかもしれないし」

「いいって!」

 踵を返して立ち去ろうとする彼女に少し荒めの声がもれる。

 そのまま腕を掴んで、俺は白河に"本音"を告げた。

「もういいんだよ、最後のつもりで描いたんだからッ!」

「……え?」

 案の定、白河は目を見開き、信じられないと言いたげに俺を見ていた。

 形の良い眉が中央に寄せられ、丸い瞳がゆらゆらと揺れる。

「さ、最後……? 先輩、絵。辞めちゃうの……?」

 彼女と初めて会った時。辞めないですよね、と念押しされた結果がこれだった。

「俺。親父と違って才能無いし……」