きみに想いを、右手に絵筆を

『高平ッ! また手ぇ抜いただろっ!?』

 想像の中で、タデやんが怒鳴るイメージが浮かんだが、知らない振りをする。

 スマホを取り出して時間を確認すると、午後五時四十分だ。

 白河は……さすがにもう帰ったかな?

 あらかじめ、今日には完成するからまた見に来て欲しいと言っておいたが、もう帰っているかもしれない。

 そう分かりつつも、彼女にメッセージを送る。

【まだ学校にいる? 絵が完成したから見に来てほしいんだけど。さすがに帰っちゃったかな?】

 送信してすぐに既読が付く。お、と口をすぼめた。

【教室に残って課題をやっていたので、まだ残ってます。和奏先輩、美術室ですか?】

 白河のメッセージを見て、口元が緩んだ。

【そっか。遅くなってごめんな? 白河は教室だろ? そっち迎えに行くから待ってて?】

 彼女の【ありがとうございます】の文面を読み取り、美術室を出ようと後ろ扉に足を向けた。

 その時、ガラガラと向かった先の扉が開き、杏奈が顔を覗かせた。

「あ! 和奏いた〜」

「おう」

 こんな遅くまで残ってるなんて珍しいな、と思いつつ右手を上げる。

「……また絵なんか描いてる」