きみに想いを、右手に絵筆を

 ニヤニヤと笑うタツに、目を瞬く。

「惚れたのか?」

「……ばッ!?」

 何言って、と抗議した所で、恐らくは図星だった。美少女であんなに良い子の白河に、惚れない男は居ない。

「図星かよッ」とタツが俺をからかう。

「和奏〜、茶色ちょっと借りるぞー?」

「あ、おう」

 部活仲間のシンが俺の絵具箱を見て、眉をひそめた。

「てか、お前。絵具足りんの?」

「あ〜……まぁ。ギリギリいけんじゃねぇかな……?」

 実のところ、少しだけ不安だった。

 それでも細部の仕上げに必死になっていると、気付いた時にはタツとシンが帰っていて美術室に残っているのは俺だけだった。

 出来た……。

 イーゼルに置いたキャンバスの前で、俺はほう、と息をついた。

 〆切前の週末に何とか完成して良かったと安堵する。間に合った。

 久しぶりに描いた油絵を見つめ、何となく不満を感じた。自然と眉が寄る。

 あれ? ……でも何だろう? どこか、物足りないような?

 圧倒的な何かが足りないような気がして、首を捻った。俺はカラカラになった油絵具を見つめる。

 色を重ねたい気もするが、もはや出来ない。

 出来ない事を言い訳に、まぁ良いかと思う事にした。