きみに想いを、右手に絵筆を

「ちょっと待ってね」と言って、彼女の髪を丁寧に解く。

 髪が千切れないように気を遣ったためか、「ありがとう」と顔を上げた白河と至近距離で目が合った。

 瞬時に白河の顔がぶわっと赤くなる。

 頬を染めた彼女の反応を見て、俺の中で男の本能というやつが疼いた。

 触りたいというシンプルな欲求に駆られ、手を伸ばして彼女の髪に触れた。

 白河は目を潤ませてただ俺を見ているだけで嫌がらなかった。

 心臓がバクバクと脈を速めた。

 そっと指を伸ばして丸く滑らかな頬に触れる。

 耳まで赤くなる彼女を可愛いと感じて、次なる衝動に駆られた。

 抱きしめたい……、キスがしたい。

 そこで急にスマホが鳴った。呆気なく現実へと引き戻され、俺は白河と距離を取った。

「はいはい?」

 電話は杏奈からで、『特別これといった用件は無いんだけど』と切り出された。

『和奏いまどこにいるの?』

「……え。中庭、だけど?」

『そっか。あ〜……そう言えば、タツが和奏の事探してたよ?』

「あ、うん。分かった」

 何なんだ、杏奈のやつ。用件は無いとか言っておいて、意味わかんねーな。