きみに想いを、右手に絵筆を

「何でそこまで言えんの? 俺そんなに自信持てる絵ってほとんど無いよ? 二年前(おととし)だって、たまたま……」

 そう。偶然、選ばれただけだ。

 きっと俺が親父の息子だから。

「私。あの絵を初めて見た時、涙が溢れたの」

 白河は俺の右手から、そっと両手を離した。

「光いっぱいの向日葵(ひまわり)の庭。明るくて、元気付けられてるみたいで……」

 俯いた彼女はその小さな手を(もも)の上でキュッと握りしめた。

「あんな景色、私には見えなかった」

 え……?

 単純に意味が分からなくて、「どういう意味?」と尋ねた。

 すると突然、どこからやって来たのか物凄い突風に煽られた。

 わっ、と声を漏らす俺に彼女の悲鳴も重なる。

 ザザザと音を立て、樹々が枝葉を大きく揺らし、青々とした空に千切れた葉を撒き散らした。

 台風みたいな風が去ってから、何となく二人して笑ってしまう。

 目にかかる前髪が鬱陶しくて、左手を上げた時。

「いた……ッ」

「え、うわ。ごめんっ!」

 彼女の柔らかな髪が、俺の左袖に付いたボタンに絡まっていた。