連休明け。昼休憩の時間に一階の自販機で紙パックのジュースを買って、ロビーから中庭に抜けようとしたところで、その後ろ姿に気が付いた。

 俺の絵の前に、初めて会った時と同様、白河が立っていた。

「白河」

 少し遠慮がちに声を掛けると、彼女は笑みを浮かべて俺へと歩み寄る。

「和奏先輩っ」

 嬉しそうにする彼女を見て、俺も自然と笑顔になる。

 再び自販機に戻り、白河の分のジュースも買った。そのまま彼女と中庭で話す事になった。

 五月の日差しは暑く、木陰になったベンチを選んで隣同士に座る。

 比較的、天気の良い日が続いていて、存在を有り有りとさせる樹々が時折音を立てて、葉を揺らしている。

「あの絵、そんなに気に入ってるんだ?」

 ただの風景画なのにな、と思いつつも、愛着を持ってくれているのが嬉しい。

 嬉しいけれど、どこか複雑な気持ちでもあった。

 過去の栄光はもう二度と描けない未来を知らしめているようで、プレッシャーになっていた。

 俺のそんな心境になどつゆほども気付かず、白河は眩しい笑顔で「はい」と頷く。