きみに想いを、右手に絵筆を

 白河はやがて「……う、」とか細い声で言った。

「上靴を隠されたり、教科書を破られたり、髪を切られたり……色々と」

「……え」

 うわ。それはマジなやつだ。

「そ、そっか。それじゃあ仕方ないよな……。うんうん」

 これ以上嫌な事を思い出させるのが酷で、俺は暫時口を噤む。

 あ……。

「あのさ。俺の事は怖くないの? 俺も一応男だけど?」

 実はずっと気になっていた事だ。白河の目に俺はどう映るのだろう?

 彼女は俯きがちに手で髪に触り、恥ずかしそうに頬を緩ませた。

「怖くないです。和奏先輩は優しいし、特別なので」

「え」

 思わず目を丸くした。

 グサっと心臓をハートの矢で射抜かれたような衝撃が走る。

 なにこの子、天然!? 天然記念物なの?? 何か……素で告られた気分になるのは俺だけ??

 ってか、いけんじゃねーの?
 俺、白ゆりと付き合えんじゃ……?

 そう考えた所で、"これ"が恋かどうかを真剣に考えた。

 白河は可愛いと思う。とびっきりの美少女で、連れて歩いていたら今日みたいに羨望の眼差しを受ける。

 けど多分。

 それだけだ。俺はこの子について、ほとんど何も知らない。

 そう考えたところで、急にグウ、と腹が鳴った。