きみに想いを、右手に絵筆を

 俺は首を捻りつつも、また鉛筆を動かした。

「あの……。男の子は苦手です。小学生の頃もよく嫌がらせされたので」

「嫌がらせ?」

 って。まさか虐めに?

「……その。いきなり筆箱を取られて何人かで回し合いをされたり。
 いきなり髪を引っ張られたり、無理矢理ノートを見て来たり。
 廊下を歩いていたらトイレに逃げ込むまで追いかけられる事もあって……怖かったです」

「……そうなんだ」

 あぁ〜……なるほど。

 それ全部、好きな女の子にやるやつね。

 男なんてただでさえガキなのに、馬鹿みたいにそういう構い方しか出来ないんだよな。

 そういや、俺の同級生でも「誰々ちゃん好きだーっ」とかって教室で叫んでるやついたな。

 何となく子供の頃を思い出し、平たいため息をもらした。

「対人恐怖症って言うか……。中学の頃は男の子も女の子も怖くて、あんまり登校して無いんです」

「え。登校拒否……って事?」

「はい。少しだけ」

「女子からも何か嫌な事されたの?」

 俺の問いに言い淀み、彼女は俯いた。

「あ。言いたく無かったら別にいーよ?」

 俯き加減の白河の顔も、素早くデッサンする。俺の頭の中に彼女という輪郭が刻み込まれ、増えていく。