「で?」


「え?」


「どっちが良かったわけ?」


 綾星くんの質問に、ハテナを浮かばせた私。


「どっちって?」


「この流れでわかれよ。だから俺の手とこのナマケモノの手」


 そんな恥ずかしいこと、答えなきゃダメ?


 モジモジしている私に、悪魔の視線が鋭く突き刺さっている。

 観念して私は小さく口を開いた。


「綾星くん……です……」


「良く言えました」


 ひぇ??


 綾星くんのさわやか笑顔。

 瞳が見えなくなるほど、思いっきり微笑んでいる。

 私の心臓を一瞬でダメにしちゃいそうなほど、ものすごい威力があって。

 きっと悪魔スマイルとのギャップに、私の瞳が惹きつけられてしまった。


 綾星くんと一緒にいると、突然襲ってくる胸の飛び跳ね。

 悪魔モードでいじってきて。

 アイドルモードで笑ってくれて。

 高校生らしい寝顔を見せてくれて。

 お兄さんモードで慰めてくれて。

 
 いきなり……キスされて……


 ダメダメ!

 さっきのキスのことを思い出したら。

 心のないキスなんて、キスとは呼ばないんだから。


 胸のドキドキが、自分の意志では抑えられない。

 バレバレなほど色づいているであろう私の頬。

 熱を下げたくて頬に手を当てると、綾星くんの手のひらの感触が再び蘇ってきてしまった。


 うっ……

 余計に私の心臓が騒ぎ出しちゃったし……


 そんな私に綾星くんが気づかないはずなく「ほのか、どうかした?」と純粋な瞳で心配されてしまった。


 ごまかさなきゃ。

 だって突っ込まれたら困るもん。

 なぜこんなにドキドキしてるのか、私自信わかっていないんだから。