ドキドキがおさまった頃、ほのかが作ってくれた野菜炒めをごちそうになった。
でも俺たちの間には、弾まない会話がポツポツ湧く程度。
もう夜の7時を回っている。
そろそろ帰る時間だよな?
お互いにそう思っているような空気が、どんよりと流れている。
春輝に脅されてるんだから、ほのかに告白しろ!
チャンスは今しかない!
強気の俺が心の中で怒鳴っているけど……
ムリだって、マジでムリ。
はっきりわかっちゃったから。
今もほのかは、イケメン御曹司で頭の中がいっぱいだって。
今の俺にできること、それは……
ほのかと一緒にいられるこの時間を、少しでも引き延ばすことぐらい。
その口実として『ドロ痛』を利用させてもらおう。
「ほのか、まだ時間大丈夫?」
「あ……うん」
「このマンガ、もうちょっと読んでいってもいい?」
俺の言葉に、ほのかのまぶたが限界まで開ききってしまった。
そうだよな。
極上に甘いマンガを読みたいって俺が言ったら、そりゃビックリするよな。



