えっ、あっ……とオロオロしながら、スマホを握りしめたほのか。
ベッド進み、ナマケモノの抱き枕の下に押し隠した。
ナマケモノの体は伝導で震えたまま。
一向に震えが止まる気配がない。
「電話、出なくていいわけ?」
「放っておいていい。蒼吾さんだから」
一瞬、誰?って思った。
でも俺の脳が忘れるはずもない。
男でも見惚れるほどのハイスペック御曹司を。
ナマケモノの揺れが消え、部屋に静寂が戻る。
安堵のため息をついたほのかに、どうしても聞きたかった言葉をぶつける。
「御曹司とは別れた?」
「……うん」
「言い訳された? 浮気のこと」
「されてない。だって……話してないもん……」
はぁ?
「じゃあ、どうやって別れたんだよ」
「スマホに送った、さよならって」
「で、返事は?」
「……わからない」
「は?」
「確認してない……電話もずっと無視しているから……」
「ほのかはどうしたい?」
「私のことなんか……放っておいてほしい……」
瞳に雫が光り、苦しそうに顔をゆがめるほのか。
これはほのかの本心じゃないだろう。
本命の彼女と別れて自分の元に戻って来て欲しい。
絶対にそう思ってる。
そんなことが簡単にわかってしまったけど……
あの御曹司のところには、戻って欲しくない。
「ほのかのスマホ貸して」
「え?」
「俺が切ってやる。ほのかとあいつの縁」
俺の放った言葉に、ほのかは反抗するって思った。
スマホなんて俺に手渡さないと思った。
それなのに、溢れそうな涙を瞳に浮かべたままスマホを俺の手の上にのせてきた。
「あいつのリダイヤル画面、出して」
言いなりのロボットのように、淡々と俺の指示に従うほのか。
俺はもう一度ほのかに確認したあt、発信ボタンをタップする。



