「隣で見てていい?」
「え?」
「ほのかが料理してるところ」
ひえ~!!
ダメ、ダメ。
理由はわからないけど、なんかダメ。
飛び跳ねている心臓が、そう訴えてるから。
「綾星くんは料理ができるまで、リビングで待ってて」
「もしかして、ほのかって……」
なに?
ニヤついた瞳が怖すぎるんですけど。
「俺のこと意識してる?」
ひゃ~~!!
「し……しし……してないです、全然……」
「じゃ、こんなことしても許してくれるんだ」
「え?」
「目、つぶって」
「いきなり……何?」
「ほのか、早くつぶれって」
綾星くんの命令口調に驚いて、私は思いっきり目を閉じた。
足音が近づいて来て、私の背中のすぐ後ろで音が消える。
背中に感じる綾星くんの気配。
一体、何が起きているの?
心臓の動きが激しすぎて、倒れそうな私。
「いいよ。目を開けて」
はぁぁぁ~。
目をつぶっている間、何も起きなかったことにホッとした。
ホッとしたけど……
少しだけ。
ほんの少しだけ。
心に残る寂しさ。
この寂しさが何なのか考える暇なく、綾星くんの恥ずかしさを含んだ声が吐息と一緒に私の耳にかかった。
「大事にしろよ」
綾星くんの低く落ち着きのある声が、くすぐったい。
体をくねらせるように視線を落とした瞬間、私の瞳に飛び込んできたもの。
私の胸元に揺れているそれは……水色の石?!



