そんな単純雅に助けられ
 握手会の準備に入った俺。


 ステージ下に
 4つのテントが立てられていて、
 すでにファンの子たちが
 それぞれ列を作っている。


 アミュレットのライブは
 誰でも見ることができる。


 でも握手会は
 アミュレットのファンクラブに入っている人しか
 参加できない。


 握手できるのは
 メンバー4人のうちの一人だけ。


 俺も
 自分色のブルーテントのところに行き
 机の前に座った。


 そして、素の自分を隠すため
 優雅な微笑みの貴公子を身にまとった。


 握手会では
 決して出さない『悪魔綾星』


「綾星くん、今週もお仕事頑張ったよ。
 褒めて、褒めて」


「さくらさんって、本当に頑張り屋さんですよね。
 来週もお仕事、頑張ってくださいね」


 できるだけ優しい声で
 とにかく褒める。


「あれ?夏希ちゃん。ネイル変えたよね?」

「綾星くん、気づいてくれたの?
 嬉しすぎるよぉ!!」


 俺の持っている記憶力をフルに使って
 ファンの子たちを喜ばせることに
 力を注ぐ。


 さて、次は誰かな?

 って……



 えぇぇぇぇぇぇ!!!

 ほ……ほ……ほのかじゃん!!