「ほのかはさ、まだ好きなわけ?」


「え?」


「御曹司のことがさ」



 ……好き。



 あんなに酷いことをされたのに、好きで好きでたまらない。

 蒼吾さんへの大好きって気持ちを、どう捨て去って良いのかわからない。



 私は綾星くんに向かって素直に頷く。



「そうだよな……」


「嫌いにならなきゃ……ダメだよね?」


「ほのかが辛くないなら、いいんじゃね?」


「……うん」


「でもさ、辛かったら俺のとこに来いよ」


「え?」


「またギター持って歌ってやるから」




 私の心の傷を優しく撫でてくれるような綾星くんの言葉に、胸が温かくなるのを感じる。



 でもそんなことを、本気で思ってくれているのかなぁ?

 きっと、冗談だよね。

 ここでバイバイしたら、私のことなんて綾星くんは忘れちゃうよね。



 そう思うのに、なんで真剣な瞳を私に向けてくれているの?

 まっすぐな瞳に優しさを感じるのは、私の勘違い?



 その時、綾星くんが不気味な笑みを浮かべた。