☆綾星side☆

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『忘れてくれていいから。
 俺のこと。全部』

 1か月前のあの日。
 なんでそんな言葉を
 俺はもらしてしまったんだろう……

 今も会いたくて 会いたくて。
 ほのかの笑顔が見たくて。
 耐えきれないのに。



 この1か月。
 朝、目が覚めても。

 退屈な授業から逃れるように
 ぼんやり校庭を眺めている時も。

 ステージの上で優等生スマイルを
 ファンに振りまいている時でさえ。

 俺の心の片隅には
 いつも瞳を潤ませた、ほのかがいる。


 でも……

 ほのかが好きなのは、俺じゃない。
 あのイケメン御曹司。


 だから俺の初恋は
 出会ったあの日に終わったんだ。

 最後の悪あがきみたいな
 キスと共に。


 終わったはずなのに。

 俺になんて振り向いてくれないって
 ちゃんとわかっているはずなのに。

 毎日毎日、苦しくてしょうがない。




 甘く痺れるような恋煩い。

 切なさに押しつぶされそうになる
 胸の痛み。

 どう治癒すればいいかわからない
 恋の病。

 絶対に恋なんかしないと思っていた俺を
 あざ笑うかのように

 心にできた擦り傷が、
 どんな時でもズキズキと疼いて、
 俺にわからせようとする。


『ほのかが好きでたまらない』という
 俺の本心を。


『恋は苦しくてたまらない』という
 現実を。