「アム……レト?」
「アミュレット!」
英語が読めない私に向かって呆れ声を出した店員さんに、首をかしげる私。
「どういう……意味ですか?」
あ~もう!と奇声を発しながら、店員さんは髪を掻きむしっている。
「お守りって意味」
そうなんだ。
でもなんでアミュレットなんてケチャップで書いたんだろう……
「なんで……お守り……?」
「お前が酷い恋なんてしてるからだろ。それ以外に意味なんてない」
『早く食べろ。固まるだろ、たまご』と付け足しながら、店員さんは私にスプーンを差し出した。
はいと弱々しく答え、スプーンでオムライスをすくって口に運ぶ。
おっ……おいしい!!
お弁当屋さんで売られているオムライスとは、全然違う。
手の込んだデミグラスソースではなく、市販のケチャップ味。
でもふわトロの甘い卵に、ケチャップの酸味が混ざり合って。
今まで食べたオムライスの中で、一番おいしい。
「どう?」
自信なさげな声をたどるように視線をあげると、悪魔モード弱の輝きを帯びた瞳が、心配そうに私を見つめていた。
「やっぱりあっちの方がいいよな?」
「あっち?」
「親父の作ったデミグラスの方……」
そんなことないです。
絶対に店員さんが作ってくれたオムライスの方が、おいしいです。
そう伝えたいのに、何かをこらえるように黙々とオムライスを口に運ぶ店員さんに、なんて声をかけていいかわからない。



