ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目


 いつの間にか涙は止まっていた。

 でも、涙の後には虚しさの塊が残った。

 自分の心の中だけじゃ消火することができない、虚しさの炎。



 心を癒してくれるような、蒼吾さんの優しい笑顔が大好きだった。

 私なんかのことを『かわいい』って褒めてくれる声が、大好きだった。

 こんな私でも幸せを感じてもいいんだって思わせてくれた。



 でもやっぱり私は、ただの2番目。

 誰かの1番になれたことなんてない。



 前の彼の時もそうだった。

 浮気現場を目撃して、私が問い詰める前に言われた。


『お前自分のこと、かわいいと思ってるわけ?』



 思ってないよ。

 思ってないけど……



 付き合ってって言われると、勘違いしちゃうんだよ。

 好きになってもらえたのかなって、心が踊ってしまうんだよ。



 そして最後に言われた。

『ほのかは家事マシーンとしてそばにおいてやっただけ。好きでもなんでもない』って。




 蒼吾さんは前彼と違う。

 誠実で優しい人。

 だから信じてもいいかもって思えたのに……



 やっぱり私のことを好きになってくれる人なんて、この世にはいないんだ。




「ほら、できた」



 再び溢れていた涙が止められないまま、私はオロオロと顔をあげた。



「ほれ!」



 不愛想な声と共に突き出された、ティッシュの箱。

 声になってない「ありがとう」をなんとか伝え、素直に受けとる。



「涙拭いたら、テーブルのとこに座れよ」



 コクリと頷く私に強めの声が飛んできた。



「早くしろ、たまご固まっちゃうから」



 ノロマながらも私なりの急ぎ足でテーブルに向かうと、トロットロのふんわり卵がのったオムライスが用意されていた。


 アゴしゃくりで促されるように、店員さんの斜め前の席に座る。



 目に止まったのは、卵の上にケチャップで書かれた文字。



     『amulet』