通されたのは、広いリビングダイニングキッチン。
対面式のキッチンの前に、6人ほどが座れるテーブル。
その横にL字型のソファ。
そして……
1段高くなっているこのスペースは?
私の心の声に答えてくれたのは店員さんで
「一応ステージ」
無愛想な声が聞こえてきた。
へ?
「お家にステージ?」
「俺も親父もギターを弾いたりするから」
確かにギターが立てかけられていて、よくわからない大きな箱みたいなのもある。
「弾けるんですか?」
「誰に言ってるわけ?」
ニヒヒと笑う子供っぽい表情に、親近感と安心感が同時に湧く。
「さっきの曲も?」
「何の曲?」
なんとなく覚えているフレーズのみを、鼻歌で歌ってみる。
「ああ、シャーベッドブルーの雫か。聞きたい?」
「……うん」
「アハハ、ぜいたくな奴」
店員さんの呆れたような微笑みに、なぜか安心してしまう。
ステージの目の前にあるソファに座るよう促され、静かに従った私。
ステージの真ん中に椅子を置き、ギターを抱えた店員さんが座った。
そして私を見ることもなくギターを弾き、歌い始めた。



