ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目


「自動ドア、危ないから」



 かすれた声が耳に届くと同時に引っ張られた、私の腕。
 

 離してと抵抗したいのに、店員さんの手のひらから伝わる温もりに
すがりたい自分もいる。




 腕を引っ張られたままお店を出た。

 連れてこられたのは、隣接する家の玄関。



「上がって」


「ここって……?」


「俺ん家」



 玄関のライトに照らされた店員さんは、なぜか瞳に力がなく、頬が桃色に色づいているのがわかる。

 

 見上げたままの私と目が合った。

 手のひらで口元を隠しながら瞳を逸らす店員さんを、キョトンと見つめてしまう。



「だから、上がれって」


「知らない人の家に……お邪魔するのは……ちょっと……」


「お前さ、どこ帰るわけ?」


「家……ですけど……」


「一人で泣くつもりだろ?」


「……」


「付きあってやる」


「え?」


「お前の失恋話、この俺がが聞いてやるって言ってんの」




 言葉はきつい。

 それなのに優しさを感じてしまうのはなぜだろう。



「いいです……慣れてますから……ぼっち……」


「慣れるな、そんなこと」


「……」


「慣れすぎると吐き出せなくなるからさ……辛いって……」



 まるで自分に言い聞かせるかのよう。

 瞳を悲しく光らせた店員さん。

 苦しそうに歪んだ口元が、私の心に細い針を突き刺していく。