ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目


「お前さ、早すぎ」


「え?」


 心を許した相手にだけ見せるような。

 そんな特別感のある笑顔が、なぜか私の目の前にある。



 これって……作り笑顔?

 それとも本物?



 子供っぽい笑顔が、さらにアイドル並みのさわやかスマイルに変わった。



 万人受け間違いなしの笑顔もするんだと感心していると、私を見つめる瞳の奥がまた妖艶に光りだして。



 いつの間にか、悪魔スマイルに戻っているし……




「もう忘れた?」



 忘れたってなんのこと?



「立ち直り、早すぎ」


「え?」


「あんなド修羅場、俺に見せておいて」




 アハハとお腹を抱えて笑い出した店員さんの言葉に、一瞬で蘇った惨めな恋。



 店員さんの笑い声が楽しそうに飛び跳ねる中

『私は蒼吾さんの浮気相手だった』

 むなしい現実を思い出し、一気に心が海の底へ引きずりこまれる。



「……いい……ですか?」


「ん?」


「私……帰っても……」



 アパートに帰りたい。

 帰って思いっきり泣きたい。

 誰もいない。さ、一人だけの場所で。




 ダメだ。

 もう堪えられない。


 涙……また溢れそう……




 店員さんの顔を見ないまま小さく頭を下げる。

 お店の自動ドアをくぐろうとした時、弱々しい声が私の足を止めた。



「わるい……」


「え?」


「調子……乗りすぎた……」




 さっきまでの堂々とした態度から一変。

 辛そうに唇を噛みしめる彼の姿に、心が押しつぶされるように痛んでしまう。



 この心の痛みは、失恋のせい?

 それとも、店員さんの苦しそうな表情のせい?



 わからなくて。

 頭が考えようともしてくれなくて。


 涙とを流しながら立ち尽くすことしかできない私。