「あ……あの……」
「聞こえたよな?」
「へ?」
「ついて来いって言ったんだけど」
はっきり聞こえたけど……
ついて来いってどこに?
「え……と……」
「お前に拒否権ないからな」
それって、あなたに助けてもらったから?
浮気発覚の最前線から、救いだしてもらったから?
この状況にどうしていいかわからず、降参の白旗を掲げた私の脳。
って、ダメだよ。
そうやっていつも、人の言いなりになちゃうんだから。
明らかに困っている私に絶対に気づいているはずなのに、完全無視の店員さん。
不安で濁った私の瞳と反するように、店員さんは瞳を力強くギラつかせていく。
「ほら、行くぞ」
行くってどこに?
ついて行ったら、とんでもないところに連れて行かれちゃいそう。
悪魔に捕まってしまったような恐怖と引き換えに、止まった涙。
体中の神経が震えだして手におえない。



