言っちゃった、言っちゃった。
脳がとろけそうとか気持ちいいとか、変質者並みの発言。
恥ずかしい……
勇気を出して伝えたけれど、綾星くんからは何も言葉が返ってこない。
無言。
どんよりした重たい空気が、私の胃をキリキリさせる。
がっかりさせちゃった?
綾星くんの反応、怖すぎだよ。
綾星くんは相変わらず、無言で私を後ろから抱きしめたまま。
その時、私を包んでくれていた綾星くんの腕が解かれた。
ど……ど……どうしよう。
これって今すぐ離れろってこと?
綾星くんに幻滅されちゃった?
もう私になんか笑いかけてくれない?
綾星くんの膝の間から出て行かなくちゃ!
そう思って床に両手をついた時、私の左の頬に綾星くんの手のひらが沈み込んだ。
そのまま強引に、頬を押され。
首を横に向けられ。
気づくと目の前。
綾星くんの瞳が私の瞳を捉えていた。
「綾星……くん……?」
「もっと、とろけさせてやる」
「え?」
「脳だけじゃなくて、ほのかの全部」
もう、とろけているよ。
綾星くんの瞳に見つめられたあの一瞬で、甘くトロトロに。
麻痺していく快感を味わいたくて、私は瞳を閉じた。
綾星くんの柔らかい唇。
もうどうなってもいい。
そう思えるほど、全神経がドロドロに溶かされてしまったのでした。



