彼女のお母さんと楽しそうに笑う蒼吾さんの声が、今も店内に響いている。 聞きたくない。 大好きでしかたがなかった蒼吾さんの甘い声なんて、耳に入ってこないで欲しい。 止まらない涙が、頬を伝って床を濡らす。 悲しみを抑えられなくて、崩れるようにしゃがみ込んだ。 そして思いっきり瞳を閉じ、手のひらできつく耳を塞ぐ。 何度も何度も願う。 これが夢でありますように。 悪夢が過ぎ去って、蒼吾さんが私だけを見てくれますように。 でも床にできた水たまりが、はっきり証明している。 私は遊ばれただけって。