ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目


「ダメだよ、指なんて切ったら。血が止まらなくなっちゃうよ」


「むしろ切って」


「え?」


「今すぐ」


 命令にもとれる強めの声が、私の耳の鼓膜にを揺らす。


 ちょっ、ちょっと待って!!

 どんな気持ちで言ってるの?

 綾星くんの指を切ってなんて。


 マンガ『ドロ痛』の1巻。

 レイジ君が雪ちゃんに言い放ったあのセリフが、脳内に蘇る。


『殺したいほど好き、お前のこと』


 さすがに私も、そのページを開いた時は恐怖をおぼえたよ。


 雪ちゃんを殺したいほど好きって、ニコニコ笑顔で言い切ったレイジ君に。


 でもあれはマンガだし。

 雪ちゃんが殺されるようなサスペンスホラーじゃない。

 レイジ君が雪ちゃんを大好き大好きっていうお話。


 でも私はマンガの世界にいるわけじゃない。

 綾星くんの家のキッチン。

 しかも、後ろから抱きしめられた状態。

 
「本気で言ってるの?」


 指を切ってだなんて。


 オドオドと見上げると、悪魔100%の意地悪スマイルで綾星くんがクククと声を出した。


「マジ」


 ひょえ!!

 本当に切って欲しいってこと?


「で……ででで、できないよ、そんなこと……」


「だって、ほのかが俺の指を切ったらさ……」


 切ったら……なに?


「舐め続けてくれるだろ?」


「え?」


「血が止まるまで、俺の指」


 む……むむむ……ムリです。

 そんな恋愛ハードルが高すぎること、私にはできない。