わかっていたよ。
私なんかが綾星くんに好きになってもらえるわけないって。
ちゃんとわかっていたけど……
はっきり言われちゃうと、けっこう苦しいね。
私の口から、胸の痛みを吐き出すようなため息が漏れる。
その瞬間、私の右頬が大好きな手のひらで包まれた。
驚いて顔を上げる。
「ごめん、マジでムリ」
「あ、うん」
「我慢なんて……」
「え?」
「嫌なら逃げろよ」
綾星くんの低く男らしい声に、脳がどろんと溶けていくのがわかる。
逃げる?
そんなことできないよ。
だって綾星くんの手のひらが、私の頬を捕まえて離してくれないから。
違う……
そうじゃない……
逃げられないんじゃない。
私が逃げたくない。
もっともっと綾星くんとの距離が縮まりますようにって、切に願ってしまう。
ゆっくりと近づく綾星くんの唇。
早く触れて欲しい。
でも触れる直前のこの幸福感も味わっていたい。
二つの欲求が風船みたいに膨らんで、自分で抱えきれなくなった時、綾星くんの柔らかい唇が私の唇に優しく重なった。



