ライブ開演、10分前。
春輝は楽屋に戻ってきた。
「あやあや、さっきはごめんね~」
「ああ」
上に飛び跳ねるスキップで
俺の前に来て、
春輝はとびきりの笑顔を俺に向けた。
「贅沢なのは、僕だよね?」
「え?」
「世界一カッコいい
あやあやとマー君とみやちゃんの3人を
ステージの上で
独り占めできちゃうんだから」
いつもの春輝だ。
なんにも悩みなんてなさそうな。
楽しいことしかない人生を
送っているような。
そんな能天気春輝だ。
いつもと同じなのに。
何かが違う。
それは俺の心の問題か?
春輝の心の闇の存在に気づいたから
違って見えるのか?
「ちょっと、あやあや。
僕の顔見すぎ。
顔に穴が空いたら
整形手術代、請求するからね」
ぶっ飛んだ発想の後に追いかけてくる
アハハと楽しそうな春輝の笑い声が、
俺の心をざわつかせる。
「さあ、僕も着替えなくちゃ」
春輝は、テヘっと子供みたいに笑って
スキップしながら着替えに行ったけど。
俺は結局
春輝に笑顔を返せなかった。



