何……SOSって……
マトイが言っていることが、全くわからない。
俺にがっかりしすぎたような呆れ声が、マトイの口から飛び出した。
「自分の部屋に入ったら、ピクリとも笑わねえよ。春は」
は?
ほとんど笑顔キープの春輝が、自分の部屋で笑わない?
冗談だよな?
マトイは俺を騙しているだけだよな?
そんなこと1ミリも信じられない俺の心は、荒波に浮かぶ船のように激しく揺らぎだした。
だって悲しい瞳のマトイを、俺の目が捉えたから。
マトイのこの言葉……
マジなやつだ……
マトイは春輝の部屋に居候の身。
俺が知らいな春輝を間違いなく知っている。
「俺には普段笑ってる春が、痛々しく見えてしょうがない。あいつがそうやって生きるって決めたんだ。文句言う資格ねえし、黙ってるけど」
「マトイ……」
『他人の心配なんて、俺はしねえ』
それがマトイの口癖なのに。
心配してることを素直に口に出すマトイの姿から、春輝の闇の深さがわかってしまう。
「綾星さ、春に甘えんな」
「甘えてなんか……」
「これ以上闇を抱え込んだら、あいつマジで壊れるから」
いつも高圧的で自信満々なマトイ。
穏やかに俺を諭す態度が、いつもと違いすぎて逆に怖すぎる。
「春のこと見てくる! 綾星は来るな。雅も近づけるな。わかったな!」
マトイの怒鳴りに近い命令口調。
いつもならもっと優しく言えよ!ってイラつくのに……
言葉の棘が刺さっているのは俺じゃない。
間違いなくマトイの方。
そう思うと何も言えなくて。
痛々しいマトイの背中を見送りながら、俺はまたメイク台の上に顔をへばりつけた。



