☆綾星side☆

***

 ほのかにネックレスを返された日から
 もうすぐ1か月。


 ほのかのことは、完全に吹っ切れました。

 今は新しい彼女と
 仲良くやってます。イェーイ!


 な~んて要領よく
 生きられるわけはなく。


 今でも未練という
 終わりが見えない砂漠の上を、
 歩き続けている俺。



 毎週、ステージの上からほのかを探す。
 もちろん、どこにもいない。


 大好きなオムライスを
 食べに来てくれないかなと、
 弁当屋のレジに立つ。

 来るわけない。


 わかってるよ。そんな簡単なこと。


 ほのかの居場所は
 大企業の御曹司の隣。


 イケメンで。
 俺と違って優しさの塊で。

 大人で。仕事をバリバリこなして。

 金を持っていて。
 肩書もスペックも言うことなし。

 そのうえ、ほのかのことをべタぼれ。


 そんな希少価値が高すぎる男より
 ほのかが俺を選ぶなんて。
 ありえない。絶対に。


 そんな簡単なこと
 まだ高校生で子供な俺でも
 はっきりわかる。
 


 この1か月。
 俺はちょっとストーカー気味だった。


 ほのかの部屋のインターフォンを
 押す勇気なんてないくせに、
 アパートの前を
 わざと通ったことも何度か。


 もしかしたら、外でばったり会えるかも。

 窓の外を眺めたほのかが、
 俺に気づいて声をかけてくれるかも。

 そんな子供じみたことを
 本気で願っていた。


 でも今は、もう行くのをやめた。

 だって。
 ほのかの部屋のベランダには
 男物の洗濯物しか干されていないから。

 
 引っ越したんだな。


 今頃、御曹司と
 マンションの最上階の部屋でも借りて、
 一緒に住んでるのかもな。


 寝る時は
 御曹司の手のひらをほっぺに当てて。
 幸せを感じているんだろうな。