グラタンを作ったことないなんて、非常識だったのかな?
でも本当のことだもん。
私に刺さる瞳が呆れ色なんだろうなって思たけれど、違った。全然違った。
予想と真逆の表情を浮かべる綾星くんを見て、私の顔まで火照ってしまう。
綾星くん、顔が真っ赤だよ。
耳まで染まってるよ。
いきなりどうしちゃったの?
「お願いしようと思っただけなんだけど……」
「え?」
「だから……俺と一緒に……グラタン作ってって……」
えぇぇぇ??
一緒に料理?
私と?
「嫌?」
テレたようにそっぽを向く綾星くんに、慌てて反論。
「嫌じゃないよ。むしろ……嬉しい……かな」
「なんで?」
「誰かと料理するの……初めてだから……」
「俺も……嬉しい……かも……」
ひょえ??
い……い……今、嬉しいって言ってくれた?
信じられない言葉に、綾星くんの顔をひょこっと見る。
恥ずかしさを隠すように、手のひらで口元を隠す綾星くん。
そんな表情しないで欲しい。
だって……
ドキドキしすぎて、手首から飛び出てきちゃうんじゃないかっていうくらい、私の脈が駆け出しちゃうから。
心臓だって病院に行かなくて大丈夫?って心配になるほど、飛び跳ねちゃうんだから。
お互いうつむいたまま、無言の時間が流れる。
「ほら、作るぞ」
自信なさげに響いた綾星くんの声。
愛想のない声色だったのに、私の心に届いた時には優しさしか感じなかった。



