☆綾星side☆

 ほのか……
 御曹司と寄りを戻したかな……


 昨日、御曹司がうちの弁当屋に来てから
 そんなことばっかり考えている俺。


 スタジオからの帰り道。


 電燈の明りだけの
 頼りない暗がりを歩きながら、
 ほのかの笑顔を思い出そうと必死……

 って……


 俺の左側がマジでうるさい。


 妄想の邪魔すんなよ。
 苺!


 事務所のスタジオで
 ライブ練習を終えた俺と苺。

 
『まだ、練習したいですぅ』と
 ウルっとした上目遣いでささやかれた。


 俺も男。
 そんなかわいい表情で迫られたら
 苺のいいなり。


 って……

 ない。ない。
 マジでありえない。


『おとといみたいに
 綾星さんの家で練習したいですぅ』


『は? 俺んち来るのは
 一回だけって言ったよな?』


『それなら暴露しちゃいますよ。
 綾星さんの本性。
 ファンの子たち、がっかりだろうなぁ』


 悪魔並みの怒鳴り声も。
 切り札を出されたら、従うしかない。


 弱みを握られた俺は 
 悔しいけど苺の言いなり。


 おとといもこれで脅され
 俺の家に苺を入れちゃったけど。
 マジで勘弁してほしい。


 萌え萌えの声、表情、仕草。

 何もかもが
 俺の神経を逆なでる。