「…どうして?」
こういうことは水瀬にも話してきちんと解決すべきだと思った。
それなのに結月は言わないでと懇願する。
「絢くんがもし、この事を知って自分を責めてしまったら私……」
“死んじゃうかもしれない。”
その顔は本気で、私も軽々しく「相談しよう」なんて言い出せない。
「…大丈夫、1人で帰れるよ!」
「でも…」
「もー、玲華ったら心配しすぎだから!…今日の事は流石に堪えたけど、私には玲華も絢くんもいるもん。大丈夫!」
その顔はいつもの笑顔で、私はつい油断してしまった。
───最後に見えた、悲しい顔を知らないままサヨナラをしてしまったのだ。

