「ここね、私が失恋する度にくるBARなの。良い雰囲気でしょ?」


カウンター席に招待され、出された酒を勧められて飲む。

言葉は交わさない。
流石社長の元秘書なだけあって口は達者で、人を誘導するのも上手い。




「…私の元彼はね、浮気してたの。私、その人の事が大好きで、その人の為なら死ねたわ。」


つらつらと1人語っていく葛西さんの言葉をなんとなく聞き流しながら、また酒を1口飲む。



「でもその人、女友達って言ってた人と浮気してたのよ。私は信じてた。…証拠写真を見せられるまではね。」


グラスを持つ手に力が入っているのが見えた。

浮気やら女友達やら、今それを話してどうなるのか…。