「あの人の事知って、俺は自分自身が嫌いになった。…なんも知らないのに、あの人の事勝手に嫌ってた俺が。」


遊佐くんをそんな顔にさせるほどの事が、水瀬さんにはあるんだろうか。


「…あの人、会社では完璧とか言われてるけどさ。本当は不器用で馬鹿なんだよ。」

見るからに完璧そうだとは思った。けど不器用で…馬鹿、だなんて思ってもみなかったかも…。




「だから…あの人の事、忘れないでやって欲しい。」




水瀬さんの事を考えると頭が痛む。
それは単に思い出したくないからか、なんなのかも分からないけれど。




「…うん。わかった。」


それでも私は、水瀬さんの記憶を失った私はあの人の事をもう一度知りたいと思ってる。


だからきっと、“もう”忘れない───。