「…すみません、少し出てきます。」


なんであんなに悲しそうな顔をしているのか、それはきっと私のせいだけど。



「あの、先生…」

「どうしました?どこか痛みますか?」

「いえ…その、あの人の名前、なんて言うんですか?」


絢くん、というのが本当の名前かどうかわからないから、名前を知っておきたい。




「あぁ、確か彼なら水瀬 絢都と──篠宮さん?!」


水瀬、絢都…

その名前を聞いた途端、頭が割れるように痛んだ。




「落ち着きましたか?」

「はい…すみません。」


触れてはいけないところだった?
私の抜け落ちた記憶の、思い出したくないところなのかな。




「…とりあえず、ゆっくり行きましょう。焦りは禁物ですよ。」