「…っ莉茉、目が覚め───」


あれ……この顔、さっきの夢の中で…。






「絢くん……“さん”?」


無意識にそう呟くと、目の前にいる絢くんという人は目を見開いた。




「とりあえず、先生を…」


ナースコールをならし、少しして先生が入ってきた。

色々質問され、触診され、結果は───












「…軽い記憶障害ですね。」


友達の名前とか自分の名前、亡くなった両親の事と生前の記憶などを聞かれた。


…けど。



「わからないんだよね?この……君の、彼氏さんの事。」


目が覚めた時一番に見えた、この夢の中で会った“絢くん”さん。

ただそれだけの記憶で、この人が私のなんなのか、何もわからない。