それからすぐに職員室から戻ってきた百叶と並んで学校を出た。
「あと1週間ちょっとだね、修学旅行」
「うん、京都初めてだから楽しみ…!」
そんな会話をしつつ百叶と別れ、家に帰ると珍しく母が頼みごとをしてきた。
「あ、おかえり柚。悪いんだけど、ちょっとスーパー行ってきてくれない?」
「うん、わかった。何買ってくればいい?」
今日の夕食に使うはずだった食材を1つ買い忘れていたらしく、私は数分後には再び外に出た。
買い物はすぐに終わり、家に戻る途中、見たことのある後ろ姿を見つけた私は思わず声をかけていた。
「あ、朝井先輩…?」
「柚ちゃん…!」
朝井先輩は、私の声に気づくと嬉しそうに駆け寄る。ジャージ姿に、足元はランニングシューズ。
「部活中ですか?」
尋ねると、先輩は笑いながら首を振った。
「違うよ、受験勉強の息抜きに少し走ってて」
〝受験勉強〟
……そうか、私の1つ上だから、先輩は来年卒業……
「部活は夏前に引退したよ」
「そうだったんですね…」
今は修学旅行を楽しみにしている私も、来年の今頃は……と考えると、少し気分が重くなった。
「ほら、俺ずっとバレー漬けだったからさ、やっぱり体動かさないとむずむずしちゃって」
言いながら、先輩の視線が私の右手に向いていることに気づいた。
「…買い物?」
「あ、はい、母におつかいを頼まれて」
「じゃあ、柚ちゃん家まで持つよ」
そう言って、先輩は私の右手から買い物バッグをひょいと持ち上げる。
「え、大丈夫ですよ…!私持てますから…!」
バッグを返してもらおうと手を伸ばす私を制すると、先輩は笑って続けた。
「気にしないで。それに、久しぶりに柚ちゃんと話したかったし」
「…!」
そんなことを言われてしまったらもう何も言えず、私はそのまま、先輩にバッグを持ってもらいながら家に向かった。


