「まーでも、それくらい言ってる方がいーんじゃね、よっぽど人間ぽいよ」
「に、人間ぽいって…」
「言いたいこと飲み込んでみんなの好きな方に従いますって、イイ子演じてんのかって俺は思うけど」
……あ、いつもの成瀬くんの感じだ…
普段通りのハッキリした言葉になぜか安心感を覚えてしまっている私がいることに気づいて、何だかおかしくなった。
「何でもみんなの意見でいいっておかしいだろ。同じ人間なんかいないんだから何かしらは思うだろ、それ言わねーで1人で苦しくなってんのアホくさくねって思うわ」
「…そ、そうですね」
「とりあえずおまえは早く、俺の前では好き放題言えるくらいにならねーとな。今のままじゃおまえ、意見ナシ感情ナシのロボットと変わんねーぞ」
「ロボットは言い過ぎじゃないですか…!」
「そうか?けっこーいい勝負してると思うけど」
「してませんっ!」
意地悪に笑った成瀬くんにつられて、私も笑っていた。
こんな風に男子と放課後を過ごしたことなんてなかった。だから何だか新鮮で、少し変な感じで、でも楽しくて。
外は真っ暗で、窓には、並んで座る成瀬くんと私が反射していた。
それからしばらくは、お互い何も話さず黙っていた。
電車の心地よい揺れ、規則的な線路の音、暖房の効いた車内、そして満たされたお腹ーーー眠るには絶好の環境…
……あと何駅だろう…
そんなことをぼんやり考えながらも逆らえず、目を閉じかけた瞬間、一気に眠気が覚めた。
私の左肩に重みを感じて隣を見ると、成瀬くんの頭がこちら側に倒れてきていた。
成瀬くんは眠っているようで…腕組みをした状態で私の肩にもたれかかってきていた。
その姿が窓の反射で映る。…それを見た途端、恥ずかしさで私は成瀬くんに呼びかけた。
けれど、起きる気配はなし…………
私は硬直したまま、さっきまでの眠気もどこかへ飛んで行ってしまった。


