そこそこ混んでいた車内は、1人分しか席が空いていなかった。
「おまえ座っとけ」
「え、私は大丈夫…」
「フラフラして転んだりされたらめんどくせえ」
「……」
こういう時の成瀬くんには、黙って従った方がいい…何となくわかってきた気がする。
私が空いた席に座ると、成瀬くんはその前に立った。
電車のガタンゴトン、の音だけが聞こえる車内で、成瀬くんは静かに窓の外を見ていた。
……改めて、成瀬くんはとても綺麗な顔立ちをしている。
シュッとした輪郭に切れ長の目、スッと通った鼻筋。
それに、朝井先輩ほどではないけれど背も高い。すらりと伸びた手足はいかにも何かスポーツをやっていそうな感じがするのに、おそらく部活は何も入っていない。
……私が言うのも何だけど、成瀬くんは、クラスの人気者になるタイプのルックスの持ち主だ。
けれど入学して以来、成瀬くんの周りをたくさんの人が取り囲んだり、誰かと一緒にお昼を食べたり登下校したり、ましてや談笑していることなんて、私が見た限りでは一度もない。
宮城くんとは話すようだけれど、談笑というよりかは、宮城くんの一方通行感が否めない感じだったし…
…その理由と思われる要因は………おそらくあの口調…
ハッキリと言葉にすることは私の憧れでもあるけれど…やっぱりちょっとハッキリしすぎな気がする……のは、私だけ…?
「…んだよ、ヒトの顔じっと見てんじゃねぇよ」
「ごっ、ごめんなさい」
……うん、やっぱり口調が強い………
今でこそ少しずつ慣れてきたけれど、最初の頃なんてもう…………
絶対に嫌われたと思ったのに、今こうして放課後に2人で電車に乗っているのが不思議で仕方ない……


