「で、決めたか?」
放課後、私の席に来た成瀬くんは、どこかへ行くのがさも当然かのような口調で聞いてきた。
「…あの、な、何か、約束してましたっけ…?」
もし約束していたら絶対に覚えている。記憶がないということは約束してないはずだけど………私が忘れていた可能性がないとは言い切れないので、恐る恐る成瀬くんを見上げた。
「いや別にしてねー」
しかしあっさりと返ってきた答えに、私はしばらく固まってしまった。
「……え、じゃあ何で急に…」
「うるせえさっさと行くぞ」
「えっ…」
ぶっきらぼうにそう言うと、成瀬くんは私の腕を掴んで立たせた。
「…あれ、柚、成瀬くんと何か約束あったの…?」
帰ろうと私の席まで来た百叶は、私たちの様子を見て驚いたように声をかけてきたけれど、
「え、えと…たぶん…?」
そのまま成瀬くんに手を引かれ、百叶に何の説明もできず、わけもわからないまま学校を出た。
とりあえず学校の最寄駅へ向かっているようだけど……さっきからずっと掴まれたままの右手が……気になって仕方ない…
「…あ、あの…成瀬くん、手…」
「あ?…あぁ」
何だか機嫌が悪そうだったから無視されるかと思ったけれど、思ったよりもすんなりと手を離してくれた。
「で、どこ行くんだよ」
「ど、どこって…」
何の約束もしていなかったのに、急にどこ行きたいと聞かれても……そんなの思いつかない…
何も言えずにいる私を見た成瀬くんは、大きなため息を吐いた。
「まだ決めてねーのかよ、さっさと決める、遅ぇ」
「…っな」
私を置いて駅へ入っていく成瀬くんの後ろ姿に、私は少しカチンときた。
…急に言ってきたの成瀬くんじゃん………!


