「前田先輩 彼女と別れたらしいよ。」

美香が そっと私に 耳打ちしたのは 2年になってすぐ。

どこで聞くのか 美香は いつも情報が早い。


「へぇ。何で別れたの?」

「そこまでは 知らないけど。まどか 告白しなよ。」

「イヤよ。フラれたら 気まずいじゃない。私は このままでいいの。」

「別れたてって チャンスなのに。」

美香は 口を尖らせて 私を煽ったけど。

美香だって 片思いを 楽しんでいた。

清水先輩に 告白することもなく…


「でもさ。まどかが 先輩のこと 好きなの 多分 気付かれてるよ。」

「うそ。ヤダ。私 普通にしてるよ?」

「まさか。まどか いつも先輩のこと 見てるじゃない。先輩も 薄々 気付いてるって。 満更でもなさそうだから。大丈夫だよ。」


光司と知り合って 1年。

私の中の  ” 好き ” は 満タンになっていた。

油断すると 溢れてしまうほど。


私は つい光司を 目で追ってしまう。

笑顔も 話し方も スポーツをする姿も。


私は 光司の全部が 大好きだった。