ひとしきり 泣いた後で 私は 祥太に電話をした。

『まどか。大丈夫か?』

『うん。ごめんね。心配かけて。』

『今 ちょっと 家出られる?俺 近くにいるんだ。』

『嘘?どこ?』

『大通りの コンビニ。』

『わかった。すぐ行くね。』

私は 母に言って コンビニに向かった。


祥太は 雑誌のコーナーで 立ち読みをしていた。

私に気付くと 店を出てくる。


「はい。コーヒー。」

下げていた袋から 缶コーヒーを差し出す。

「ありがとう。」


祥太は 私を見て 鼻をつまむ。

「まどか。また泣いたの?」

「だって…」

「まどかの家まで 歩こうか。」

「うん。こっち。」


肩を抱く 祥太に 寄り添って 私達は 歩き出す。

「祥太。来てくれて ありがとう。」

「んっ?まどかが 心配だったから。」

「うん。もう大丈夫だよ。彼も わかってくれたから。」

「そうか…彼氏 なんて言ってた?」

「祥太と うまくいかなくなったら いつでも 戻って来いって。」

「戻すかよ。」


私の胸は また ドキドキに包まれる。

光司には 一度も感じなかった思い。


「うん。戻んないよ。」


いくらも 歩かないで 私の家に着いて

「祥太。ウチ ここだよ。」

「ご両親に 挨拶していく?」

「えーっ?」

「嘘だよ。こんな遅くに 失礼でしょ?今度 改めてね。」

「うん。今日は 来てくれて ありがとう。」

「こちらこそ。俺 明日は 早く上がるから。メシ食おうな。」

「うん。おやすみ。」

私が 祥太の腕から 抜けると


「まどか、まどか。」

祥太に 呼び止められて。

「んっ?なあに?」

振り向いた私を 祥太は 抱き締めた。


「おやすみ。まどか。」


祥太が 離した後も 私は 動けなかった。