私は 大馬鹿者だと 自分で思う。

中井さんと もんじゃを食べた後

隅田川沿いを 散歩まで してしまった。


光司が 大切なら 中井さんに 近付いたらいけないのに。


「わぁ。水が 近い。」

川縁の 柵にもたれて 私は 川を見下ろす。

肩が 触れそうな近くに 中井さんを感じて。


どうしようもなく ドキドキする心。


「藤本さん 入って来た時  ” おっ 可愛い ” って思ったよ。でも 何か ガードが固くて。そのうち 誰かが 藤本さんは 彼氏 いるらしいって言ってて。あー なるほどって。」

中井さんの話しを 私は 

川を見たまま 聞いていた。


「じゃ どうして 食事に誘ったんですか?」

川面は 私の心みたいに 揺れていて。

じっと 見ていると 眩暈がしてくる。


「藤本さんが 来てくれたのと 同じ気持ちかな。」

中井さんの答えが よくわからなくて。

私は 顔を上げて 中井さんを見る。


「なんか 最近 寂しそうに見えたんだ。寂しかったんだろ?」

私は ハッとして 何度も首を振る。


どうして こんなに 見透かされているの?


中井さんの瞳は 熱くて。

見つめ合っていると 

眩暈がしてきそうで。


「信じないかもしれないけど。俺 真剣だから。俺なら 藤本さんに あんな寂しい顔 させない。」

「お願い… それ以上 言わないで。」

私は 柵にしがみ付く。


初めて感じる ドキドキで

私は 立っているだけで 精一杯で。


「ごめん。藤本さんを 困らせるつもりは ないんだ。」

中井さんは そう言って フッと笑った。


「一緒にいると どんどん 惹かれていって 困ってるけどね。」


私は 中井さんの胸に 飛び込みたい衝動を 必死で抑えた。


多分 中井さんも 抑えていたと思う。

私を 抱き締めることを。