「温子さん。」
「純一。」
二人はグラスを合わせて乾杯しながら見つめ合った。
前菜がテーブルにサーブされる前に純一は温子にプレゼントを手渡した。
「ありがとう。私からは何もなくて悪いみたい。」
「温子さんは気にしないでください。僕からの気持ちなんですから。」
重厚なボックスに驚きを隠せない温子は息をとめて目を見張った。
見たこともない細やかなデザインの金のチェーンには
眩しいくらいに輝く3つのエメラルドが
超リッチなレストランの天井から降り注ぐ
豪華なシャンデリアのきらめきを受けて妖し気に光っていた。
喉から心臓が飛び出そうな金額ではないだろうか。
温子はさっき飲んだワインが逆流してきそうで指先が震えた。
「気に入ってくれるといいんだけど。」
純一のその控えめな言葉とは真逆の
安易に受け取れないレベルのゴージャスなジュエリーである。
温子はまばたきを繰り返しても
目にしみるエメラルドのクリアなカット面に吸い込まれそうだと思った。
「純一が選んでくれたの?」
「いや、実をいうと迷ってしまって、ハハハ。」
「じゃ、誰がこれを?」
「ジュエリーのプロっていうのかな。」
「はあ?」
「とにかく、温子さん、つけてみて。」
「うん。今まで見たこともないほど高価なものだと思うと手が震えちゃう。」
温子は慎重にネックレスを身に付けた。
「あっ、すごく似合っている。良かった。」
温子は純一の笑顔に励まされたように弱々しい笑みを返した。
「とてつもなく光っていると思うんだけど。」
「上品な輝きって言ってください。」
温子は首元の重みにそっと指先で触れ
ひっそりとため息をついた。
自分の首に何十万、
いや何百万円のジュエリーがぶら下がっていると思うと
これからご馳走になる贅沢なランチを心ゆくまで堪能できそうにない。
のどの奥にこみ上げるような切ない気持ちがあって
涙が出そうになるのを必死にこらえた。
「純一、ありがとう。」
温子は純一の目をしっかりと見て言った。
再び乾杯をした。
「温子さんにお願いがあるんですけど。」
「お願いって?」
「すぐにってわけではなくて、もちろん考えてからで全然構わないですから。実は、良一兄さんに会ってもらいたいんです。」
「長男さんね。」
「うん。」
純一は温子が早川家に対して敬遠的な気持ちがあって嫌がるのではないかと心配し暗い表情でいた。
「私はいつでも構わないわよ。」
「えっ?本当ですか?」
予想外の返事に純一は目をパチクリした。
「ええ。」
「でも、この間までは早川のことにあんまり気がなかったようだから。」
「実は、誰にも内緒で大おばあ様に会ったの。」
「ええええ?それ、本当ですか?」
純一は驚きを隠せなかった。
「そうなの。」
「それって、どういうことですか?」
「つまり、私にとって純一しかいないってことなのよ。」
「温子さん、今の言葉、か、感激です!」
「んもう、純一ったら、大袈裟ね。」
「嬉しすぎて、もう胸がいっぱいで。」
二人はテーブルの上で手を握り合った。
見つめ合う目を潤ませて
恋人たちは甘い甘いオーラを立ち昇らせていた。
~ 完 ~
最後までお読みいただきましてありがとうございます。
お楽しみいただけましたでしょうか。
これからも素敵な恋物語を展開していけたらと思っております。
北原留里留
「純一。」
二人はグラスを合わせて乾杯しながら見つめ合った。
前菜がテーブルにサーブされる前に純一は温子にプレゼントを手渡した。
「ありがとう。私からは何もなくて悪いみたい。」
「温子さんは気にしないでください。僕からの気持ちなんですから。」
重厚なボックスに驚きを隠せない温子は息をとめて目を見張った。
見たこともない細やかなデザインの金のチェーンには
眩しいくらいに輝く3つのエメラルドが
超リッチなレストランの天井から降り注ぐ
豪華なシャンデリアのきらめきを受けて妖し気に光っていた。
喉から心臓が飛び出そうな金額ではないだろうか。
温子はさっき飲んだワインが逆流してきそうで指先が震えた。
「気に入ってくれるといいんだけど。」
純一のその控えめな言葉とは真逆の
安易に受け取れないレベルのゴージャスなジュエリーである。
温子はまばたきを繰り返しても
目にしみるエメラルドのクリアなカット面に吸い込まれそうだと思った。
「純一が選んでくれたの?」
「いや、実をいうと迷ってしまって、ハハハ。」
「じゃ、誰がこれを?」
「ジュエリーのプロっていうのかな。」
「はあ?」
「とにかく、温子さん、つけてみて。」
「うん。今まで見たこともないほど高価なものだと思うと手が震えちゃう。」
温子は慎重にネックレスを身に付けた。
「あっ、すごく似合っている。良かった。」
温子は純一の笑顔に励まされたように弱々しい笑みを返した。
「とてつもなく光っていると思うんだけど。」
「上品な輝きって言ってください。」
温子は首元の重みにそっと指先で触れ
ひっそりとため息をついた。
自分の首に何十万、
いや何百万円のジュエリーがぶら下がっていると思うと
これからご馳走になる贅沢なランチを心ゆくまで堪能できそうにない。
のどの奥にこみ上げるような切ない気持ちがあって
涙が出そうになるのを必死にこらえた。
「純一、ありがとう。」
温子は純一の目をしっかりと見て言った。
再び乾杯をした。
「温子さんにお願いがあるんですけど。」
「お願いって?」
「すぐにってわけではなくて、もちろん考えてからで全然構わないですから。実は、良一兄さんに会ってもらいたいんです。」
「長男さんね。」
「うん。」
純一は温子が早川家に対して敬遠的な気持ちがあって嫌がるのではないかと心配し暗い表情でいた。
「私はいつでも構わないわよ。」
「えっ?本当ですか?」
予想外の返事に純一は目をパチクリした。
「ええ。」
「でも、この間までは早川のことにあんまり気がなかったようだから。」
「実は、誰にも内緒で大おばあ様に会ったの。」
「ええええ?それ、本当ですか?」
純一は驚きを隠せなかった。
「そうなの。」
「それって、どういうことですか?」
「つまり、私にとって純一しかいないってことなのよ。」
「温子さん、今の言葉、か、感激です!」
「んもう、純一ったら、大袈裟ね。」
「嬉しすぎて、もう胸がいっぱいで。」
二人はテーブルの上で手を握り合った。
見つめ合う目を潤ませて
恋人たちは甘い甘いオーラを立ち昇らせていた。
~ 完 ~
最後までお読みいただきましてありがとうございます。
お楽しみいただけましたでしょうか。
これからも素敵な恋物語を展開していけたらと思っております。
北原留里留



