あと一年ちょっとの我慢。
 高校を卒業したら、あたしは大地くんの奥さんになる。

「チンアナゴのチンって。犬の名前からとったんだよ」
「あんたそんな雑学に興味持つ子じゃなかったよね」
「何度も、つっ返したんだけど。あたしが持ってろってさ」
「ごめんよくわかんない」
「楽しかったなあ」

 また、行きたいな。水族館に観覧車。

「どんな高級アクセや時計よりも。そんな量産品が美香にとっての宝物ってわけか」
「あの日、大地くんに買ってもらったペンは、これだけだもん」 
「なんか変わったね。美香」
「そうかな」
「少なくともプレゼントひとつでそんなに浮かれような女じゃなかった」

 大地くんがくれるってだけで限定モノになる。

「大地くんがくれたらゴミでも持って帰るかもあたし」
「……それはどうかと思うよ?」
「他言無用にして、だってさ」

 あたし達の関係。

「じゃあこんなところでべらべら話さない方がよくない?」
「べつにー。悪いことしてないし」
「まあ、上に報告しづらいよね。女子高生と結婚を前提にお付き合いしてるなんて」
「付き合ってない」
「は?」
「はやく恋人になりたいな」