きっと、神様なんていない。
 いたら、こんなにもカンタンに人の幸せを取り上げたりしないだろうから。
 それとも、それらは与えられるべくして与えられた試練だとでもいうのだろうか。
 とても納得できるわけない。

 人生が平等なんて考えは綺麗事だ。
 この世は不条理に満ちている。

「そんなとき」

 大地くんの目に、光が宿る。

「防衛大学校という場所があることを、知った」

 授業料もかからなければ、住む場所も食事も提供され、給与もいただける。
 幹部自衛官を育て上げるための場所。

「どうして自衛官になったか、と聞かれたとき。『人の役に立ちたいから』と答える立派な人間もいるだろう。だけど俺は。裕福じゃなかったから。当時の生活に、意義が感じられなかったから。だから、自衛官を目指してみることにした」

 そう、だったんだね。

「退屈か。こんな話は」
「ううん。聞きたいよ。大地くんが自分のこと話してくれるの、すごく嬉しい」
「ほんとお前は。つくづく物好きだな」