「進学校に通い始めたものの、学校にいる時間が無駄に感じた。周りのやつ、みんな口を揃えて偏差値の高い大学に進むって意気込んでいてさ。模試や試験の数字ばかり気にして。じゃあ進学してなにがしたいかって聞いたら、特にないだとか。大学生は自由度が高いから遊びたいだとか。安定した仕事に就きたいとか。そういうの。俺にはどれもピンとこなかった」

 大地くんは、どんな少年だったのだろう。
 将来の夢を聞かれて、なんて答えてた?

「海月は店の手伝いをしているのに、俺は机に向かってる時間が多くて。よくわからない期待、背負わされて。知識を膨大に詰め込んだ三年間ではあったけど、たいして中身なんてなかった。所詮は小さな世界で興味ない相手と戦っていたにすぎない」

 幼い大地くんは、本当に、学びたいことがなかったのかな。

「高二の夏。海月の両親が他界した」

 夢も希望も抱くことさえ許されなかった。そうは、考えられないだろうか。

「海月は、この店を守った。そして俺をも支えたんだ」