「ぼく、おさかな、おいかけてたの」
「たくさんいるからな」
「すっごいよね」
「ああ。凄い」

 水槽の中の様子に夢中になって、周りが見えなくなってしまっていたんだね。

「美香さん」
「は、はいっ」

 男の子を、ひょいと抱きかかえてしまう大地くん。
 子供とはいえ、それなりに重みがあるだろうに、軽々と。

「インフォメーションまでいって、事情を話してアナウンスかけてもらおうかと」
「……うん。あたしも行く」

 少しも動じてないなあ。
 それに、子供の扱い方、うまい。

「おにいちゃん、おおきいな」
「大きいだろ」
「シンゲキのキョジン?」
「進撃は……しないな。自衛だ」
「ジエイ?」
「守ってる」
「なにをまもるの」
「この国を」
「アカレンジャー?」
「んー。どちらかというと。緑だな」

 喋ってんだけど。普通に。
 あたしの前よりずっと口数多いんだけど!?
 それにちょっとおもしろいな。

 ふと、男の子が笑顔になっていることに気づく。
 そうか。
 きっと、ママとはぐれて不安になっているから話して気を紛らわしてるんだ。
 ……優しいじゃん。

「おしっこ」

 え?

「おしっこ。もれちゃう」