それにしても両手が寂しい。
 手、繋ぎたいな。ダメかな。

 けっこう混んできた。週末だもんね。
 はぐれないためにも繋がない?

 あたしからじゃ、なくて。大地くんから。

 ……なーんて。
 そんなこと期待してもどうせ無理だよね。

 ―――えっ

 手を。ふいにギュッと、つかまれる。

 なんだなんだ。
 こういうことしてくれるんだ!?

 思ったより柔らかくて、あたたかい。
 なんて可愛らしい手。
 
 ……いや、さすがに、小さすぎないか?

「ママぁ」

 んん゛っ?

「えっ。ママ……じゃ、ない」

 見知らぬ子供――幼稚園児くらいの男の子に、手を握られているではないか。

「ママは!?」

 いや知らん。こっちが聞きたい。
 ひょっとして迷子の子供……!?

 どうしよう。
 こんな年の男の子の相手、したことないよ。なんていえばいい?

「ママいなくなっちゃった?」

 ――――!

 大地くんが、屈んで視線を落とすと、男の子に問いかける。
 
「……うん」
「ママと、ふたりで来たの?」
「カンナちゃん」
「カンナちゃん?」
「いもーと」
「ママ、カンナちゃん、君の。三人?」

 指折り数えながら、男の子に確める。
 男の子が頭を縦に振る。

「じゃあ。お兄ちゃんと、お姉ちゃんと一緒に。ママとカンナちゃん探そう」
「うん」

 その瞬間、男の子の不安が、ほんの少しやわらいだように見えた。