昼休み。
「なんだこのふざけた進路希望は」
「ふざけてないよ」
廊下で、マキノに進路希望調査のプリントを突っ返された。
「第一志望。花嫁だァ?」
「自衛官の嫁は専業主婦も多いの。転勤もあるから」
「親は。それでいいと?」
「いいんじゃないかな」
「大学は」
「行かない」
「せっかくストレートであがれるのにか」
全員が進学するわけでもないでしょ。
たとえ100人中、99人が学生を続けてもあたしは続けない。
「時間を無駄にしたくないの」
「無駄ねえ。彼氏がお前にそうしろとでも? だとしたら束縛しすぎやしねぇか」
「……言ってない」
これは、あたしが決めたことだ。
「ていうか、彼氏じゃないから」
「話にならん。家に連絡する」
「やだ!」
「冷静になれ。お前が嫁になって、なにができる」
「なんでもしてみせる」
「家事の一つでもしたことあるのか?」
「今、勉強してる」
「勉強? サボり魔のクセにか」
学校の勉強はヤル気でないのに、将来役に立つと思えることには身が入る。
「自衛官の収入がどの程度か把握してるし。今、帳簿つける練習もパソコンでしてる」
「習い事したけりゃ好きなだけさせてもらえるわけか。いいご身分だな」


