「美香のお弁当、どんどんレパートリー増えてくね」
「でしょ?」
「まさか料理に目覚める日がくるとは」
「大地くんに栄養満点なご飯を作ってあげられるようになりたいもん」
スマホのカメラロールを立ち上げて若菜に見せる。
「これはね。うちで作ったやつ」
「すごい量……。誰が食べるの」
「モトナリ。あとパパも仕事行く前とか。帰ってきてから食べてくれてたり」
「そうなんだ」
まさかモトナリやパパに、あたしがご飯作ってあげることになるなんて。
いや大地くんへの特訓で作ったものだけど。
「この写真は彼に送ってんの?」
「んーん。これは秘密の特訓だから」
「ははーん。腕を磨いておいて、サプライズするんだ? だからSNSにも載せてないのか」
「ビックリさせてやる」
会えないあいだに女子力大幅アップさせる作戦である。
「あたし。いい奥さんになりそう?」
「なるなる」
「適当に言ってない?」
「健気だねえ。美香をそんな風に変えた大地くんは。ほんと罪深いよ」


